発達障害は注意欠如・多動症(ADHD)、自閉症スペクトラム障害(ASD)、学習障害に分けられます。
脳機能がバランス悪く発達するなど、脳が普通ではない状態になることが原因になって起こる症状で、多くの場合は幼児の時点からその傾向が見られます。
発達障害を抱える患者様の脳は認知機能(記憶、理解、計算、学習、思考、言語、判断などを行う機能)に日常生活に支障をきたすほどの偏りがあるとされます。そのため、ある特定のジャンルにおいては人より優れた能力を有しますが、別の分野においては上手く対応できないという特徴がみられます。
完治させることは現時点では不可能ですが、支障をきたしている部分を治療によって緩和させることが可能です。
ADHDの方は継続して注意をすることが難しかったり、細かいことに注意が向かないため、家事や仕事をこなす上で物忘れやケアレスミスが目立ちます。
他にも、日常生活の中で約束を忘れたり、約束の時間に遅刻したり、締め切りに間に合わなかったりするといったケースもよくあります。
また、子どもの時にあった衝動性や多動性は大人になるとあまり目立たなくなりますが、日常の中でその症状が垣間見られる場面があります。例えば人の話を途中で遮って自分が一方的に話してしまう、待たされた時にイライラしてしまうという場面は症状の一部といえます。
さらに、対人関係に支障が出たり、社会適応能力が低くなることがあります。本人の知性や人間性には問題がないにも関わらず上手く行かないことが多いと、自尊心が低下して思い悩むようになり、気分の落ち込みや不安など抑うつ症状が出てしまうこともあります。
ADHDの症状は大人になってから突然現れるものではなく子どもの頃からずっと悩んでいることが多いです。多くの方は不注意、衝動性、多動性というADHDの症状に自ら対策や工夫を行い改善に努めますが、状況が改善しないまま大人になり、社会に出てからも上手く行かないことがあるため悩みやすくなります。
またADHDの場合、歩行スピードや掃除をする時間など、日常生活で必要な能力や行動のパフォーマンスが落ちていくこともありますが、気のせいだと判断し自分が病気であることに気づかないこともあります。自分を一度客観的に見つめ直し、疑われる症状がある場合は一度、ADHDではないかと考えてみましょう。
家事や仕事など、やるべきことを最後までやりきることができない
仕事や生活の必需品(財布や鍵、スマートフォンなど)を度々失くす
気が短く、些細なことで我を失い、激怒することがある
一箇所に留まっていると落ち着かず、静かに座っていることが苦手
ADHDの原因はまだ明確にはなっていません。しかし、神経生物学的な原因で起こることが、近年のSPECTや MRIといった画像診断により分かってきました。
また、脳の神経伝達物質が関連していて、脳の発達・成熟に偏りが機能的もしくは器質的な要因のために起こり、ADHDに至るといわれています。出産時に生じた障害などによる形態学的な脳の異常、神経伝達物質の脳内でのバランスが取れないことに伴う機能異常、周囲の環境など様々な要素が複雑に絡み合っていると考えられています。中には原因が「幼少期の親のしつけが悪かったから」と考える方もいますがそれは大きな誤りです。
ADHDを診断するには母子手帳や両親からの情報から、幼い頃や学生の頃の様子を把握することが大切です。配偶者や仕事の同僚など周囲の方からの情報も診断に重要な情報となります。
診察では現在の状況を確認した上で幼少期や学童期の状況の確認を実施し、血液検査や心理検査も同時に行い総合的に判断します。
ADHDは似たような疾患があり、すぐには診断ができない場合もあります。例えば、不安障害、統合失調症、境界性パーソナリティ障害などは症状が似ているため、正確な診断をするためにも専門の医療機関を受診しましょう。
ADHDの治療方法は「心理社会的治療」と「薬物療法」の大きく2種類があります。日常生活や対人関係、働き方などを見直し、工夫をすることで症状の改善に役立ちます。治療は専門医にかかり医師と相談することをお勧めします。
ADHDの治療薬には中枢神経刺激薬を用います。ADHDに抑うつ症状を併発している場合には抗うつ薬や抗不安薬などが有効です。
なお、興奮や混乱状態、衝動性や反抗的言動を抑える目的で、抗てんかん薬や抗精神病薬などが用いられる場合もあります。
自閉スペクトラム症は学校や職場、家庭など人と接する場面で、特定の物事に強いこだわりを見せたり、社会適応性やコミュニケーション能力の欠如が認められる疾患です。以前は自閉症やアスペルガー症候群、広汎性発達障害などと呼ばれていた疾患の総称です。
自閉症スペクトラム障害の特徴がどのくらい強く現れるかは、すべての症例に差が見られるほど大きな個人差があります。五感のうちのいずれかが鈍感になったり、逆に敏感になったりする症状もあり、 最近では100人に1人以上が有病と報告されています。また、男性の方が女性の何倍も多いとのデータもあります。
自閉症スペクトラム障害は生まれ持った性質であり、育て方や周囲の環境が原因ではありません。様々な遺伝的な要因が絡み合って生じる、脳の機能障害が原因だと考えられています。
以前、自閉症スペクトラム障害は「コミュニケーションの障害」「社会性の障害」「反復した常同的行動」と3つの症状が起こると広く認知されていましたが、現在はDSM-5という新しい診断基準になりました。
DSM-5では「言語性のコミュニケーション障害」と「社会相互交流の障害」をひとまとめとしました。現在、自閉症スペクトラム障害の症状としては二種類に分類され「社会的コミュニケーションの障害」、「限局的反復的な行動パターン」とされています。
冗談や皮肉が伝わらない
相手との良い距離感が分からない
集団行動をするのが難しい
人の考えや気持ちを読み取り話や行動をすることが苦手
物事に没頭すると周囲のことが目につかなくなる
細かいことが気になり作業が進まない
物事の順番に強くこだわる
自閉症スペクトラム障害かどうかの診断は、基準であるICD-10:「国際疾病分類第10版」やDSM-5:「精神疾患の診断・統計マニュアル 第5版」などに基づき診察を通して総合的に行います。
加えて、障害の診断には生育歴などが大きな判断材料となりますので、通知表などの幼少期の様子がわかるものをご持参ください。可能であればご家族と共にご来院頂ければ診断がスムーズに進みます。
他にも、心理検査などの検査結果などが得意不得意や特性の理解を深めることに繋がり、その後の治療にも活きてきます。
例えば集団内での問題を今までは避けて来れたものの、うつ病や不安障害を発症し、職場で適応できないことを理由に受診頂くケースも少なくありません。他の精神疾患と診断されたとしても自閉症スペクトラム障害が隠れていないか疑うことも大切です。
自閉症スペクトラム障害の症状は先天的なものであるため、今のところ根本的な治療法はありませんが、その特性と向き合って適切な環境調整や対応を考え、実践していくことで日常生活の悩みは改善することができます。
例えば配偶者や職場の方に配慮をお願いしたり、自分の得手不得手を理解して対応策を考えていきます。患者様ごとに悩みは異なりますので、まずは専門医にご相談ください。精神障害者保健福祉手帳などの公的な支援の利用も検討可能です。
また、自閉症スペクトラム障害によって社会的生活が困難になることにより、うつ病や不安障害などの精神的な病気を併発することもあり、その場合には該当する病状に合わせた治療薬も併せて処方します。
「メンタルケアで全ての人が今よりも生きやすく輝ける未来を目指して」
明るい未来を紡ぐために、当院は一心一意に皆様の心に寄り添ってまいります。
心のお悩みや困りごとがありましたら、どうぞ何なりとお問い合わせをくださいませ。
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